弊社の2020年ウィンタージョブにエントリーいただいた皆様、ありがとうございました。

本記事では、「エントリーいただいた皆様の振り返りの一助としてもらう」ことはもちろん、
弊社にエントリーされていない/今後エントリーする予定である皆様や、エントリーとは関係なく弊社に興味をお持ちいただいている皆様にも、「コンサルタントの思考の一端に触れてもらう」べく、エントリーシートで出題した問題の意図/講評を書かせていただきます。

今回のエントリーシートの問題　『タンタカポンの憂鬱』　

あなたは、国内の超一流企業に勤め、30歳で部長に抜擢されたエリート社員です。

あなたは、勉強熱心で様々な書籍を読み漁り、各種セミナーにも参加するなどして、自己研鑽してきました普段の仕事の中では、コアコンピタンスや、リソース・ベースド・ビューなどのカタカナ言葉を使いこなしながら部下に指示を出したり、ミーティングを取りまとめたりしてきました。

そんなあなたから⾒ると、これらの概念をちゃんと理解できていない同僚や、そもそも知らない部下を⼼の中では軽蔑し、⾃分は何でも知っていて優秀な⼈間であると思い込んでいました。

ある⽇の朝、会社に⾏くと、プロジェクトを⼀緒にやっているメンバーの榊が新人メンバーの⽔野に対して、「この資料だと、タンタカポンの基本が出来ていないんだよね。この資料は、恥ずかしくてお客さんに出せないかな」と叱責しており、あなたを⾒た榊が「部⻑、この資料を⾒てどう思いますか。⽔野は、タンタカポンも出来ないんですよ」と⾔ってきたので、タンタカポンが何かよく分からなかったものの、あなたは「⽔野、タンタカポンは⼤事だぞ」と答えてしまいました。

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また、次の⽇には、クライアントの社⻑の沖島から「先⽇、お客さんとバーに⾏ったら、出てきたものがタンタカポンだった。君はタンタカポンをどう思う︖」と⾔われ、あなたは「タンタカポン、美味しいですよね。私も好きです」と答えたところ、沖島は「⾺⿅にしているのか」と怒ってしまいました。あなたは、頭が混乱して、クライアント先から会社に帰って、必死にインターネットや書籍で調べましたが、タンタカポンに関する説明は⼀切出て来ず、どうしても意味が分かりません。

さらにその⽇の夜に、⼤学時代の友⼈の結城と萩尾と⾷事をしていたら、彼らから「そういえば、今度の⽇曜⽇、⼩沢のためにタンタカポンするんだけど、お前もどう︖」と聞かれ、⼀層混乱しながらも「でも、俺タンタカポンやったこと無いし、苦⼿だから遠慮するよ」と答えたら、⼆⼈は怪訝そうな顔をしていました。

【問】
もう、「タンタカポン」を知っているフリで凌ぐのは限界です。
類稀な想像⼒、論理的思考⼒、思考体⼒の持ち主であるあなたは、この「タンタカポン」が何を指すのか理解するために、どのようなアクションを取りますか。また、その際あなたは、１回だけ質問をすることができます。誰にどのような質問をしますか（タンタカポンの意味を直接聞く質問はNGです）。
取るアクション、その際の質問対象、質問内容を説明した上で、そこで得られる回答を仮定し、その回答を踏まえた場合に、「タンタカポン」が何を指すのか推察してください。
回答字数は、50~1,000字とします（⽂字数の多寡は問いません）。

問題の解説と講評

今回は、「タンタカポン」という謎につつまれた用語の意味を、「アクションと質問」を通じて解き明かすというお題を提示しました。以下、簡単ではありますが、今回の出題の意図、評価の視点を講評します。

我々は、思考能力やコミュニケーション能力といった基礎能力を土台に、本質的な経営課題に対し解を求めるクライアント企業の皆さまに価値を提供しています。そのために、コンサルタントは、仮説の構築、仮説の検証、検証結果を踏まえた仮説の先鋭化のサイクルを繰り返すことが求められます。今回は、このようなコンサルタントのあるべき姿を通じて、未知の言葉を解き明かすことを期待して作成しました。

提出頂いたエントリーシートを拝見すると、「どのように上手く質問をするか」に力を注いでいるものが散見されました。読んでいて、「この聞き方は上手だな」と思うものも多くありました。しかし、本来、質問をすることは、仮説を構築したうえでの検証プロセスであり、1回きりの質問を上手くしてその回答によって、仮説を持つというのは、コンサルタントの思考プロセスとは相いれないものだと思います。

繰り返しになりますが、コンサルタントとして、難解な問いを解き明かすためには、仮説構築、検証、先鋭化のプロセスを丹念に続けることが不可欠です。今回の“タンタカポン”に対しても、「手元の情報に留まらず、幅広く思考・行動」し、そこから「仮説を立案」し、その「仮説を検証するための最適なアクション（質問はその一つ）」を考え、「効果的に検証できる質問内容を考案」、「結果に基づき仮説を深化」することが、コンサルタントに求められるアプローチであり、そのような観点から、ご提出いただいたエントリーシートを拝見しました。その中では、結果としての仮説の筋の良し悪し（タンタカポンの意味の推察の良し悪し）は、必ずしも重視しておらず、このようなプロセスを自ら回せているかという観点を重視しました。

具体的には、例えば、我々がこのような状況に陥った場合には、以下のような活動をすると思います。（注：エントリーシートの回答ではございません）

① 手元の情報に留まらず、幅広く思考・行動する

手元の情報から「タンタカポン」の要件を演繹的に考察する。
実用例のサンプルを増やすために、TVや街中などで使用現場を見つける活動を取り、帰納法的に考えられないか模索。（インターネットと書籍は実施済）

② 状況整理に基づき仮説を立案

“ビジネス文書の重要な構成要素”であり、“バーで出てくるモノ、又はその状況を形容する概念”、かつ、“友人に対して実施するモノ”であり、“これまでに主人公が実施してきたこと”であるため、例えば、「相手に気を配るような概念」、「相手の期待値を超えて驚かすこと全般」又は「サプライズ」の意味ではないかなどと仮説を立てる。（これに限らず別の仮説も、幅広く成り立つと思います）

③ 検証の仕方を考える

立てた仮説を、実際に周囲の人に使ってみて、その反応で修正する（アジャイルに試行錯誤する）
（設問の通り）誰かに質問をする。

④ 　質問をする際の対象を評価　← ここから入ってはいけない

「意味を確実に知ることができるか」を最重要論点としつつ、「対人関係など悪影響が起こらないか」も加味。

⑤ 　検証するに足る質問の仕方を決定

仮説を踏まえ、例えば、複数のビジネス文書を、相手に気を配るような内容になっているものとなっていないものに仕分け、それ以外にも、様々なビジネス文書の重要な構成要素のあるなしで分けたものを見せつつ、「出来ているものはどれで、具体的に何が出来ているのか」を質問する。

⑥ 　アクションの結果から仮説の評価、深化

仮に、「色遣いや、平仄の統一など、読み手の気持ちを思いやること」と示されたとし、さらに、理由の説明から、「相手の立場、好み、シーンを踏まえ、最適なアレンジを加える」というニュアンスも含まれることにも気づく。
他のシーンとの整合も取ると、バーでのタンタカポンは「沖島のことをイメージしたお任せカクテル/料理」、結城と荻尾については、「（失恋、昇進など小沢の近況を踏まえ）小沢のための飲み会（正確な定義は小沢の性格・近況の想定に依存）」　と意味が通る。（上記は、解の一例であり、相手の期待値を上回る活動全般や、サプライズな事等、他にもいろいろな解釈が可能です）

終わりに

今回のエントリーシートは、日常的なシーンでの奇妙な物語を設定しましたが、これを通じて問うている内容は、難解な問いに立ち向かう、コンサルタントの在り方そのものでした。
また皆様の回答を見ると、様々な論理展開や、大胆なアクション選択の結果、想像を超えて多様な“タンタカポン”の意味があることに驚き、新たな気づきがありました。
なお、言うまでもなく、本来は、このようなシチュエーションでの最善の手は、一番最初に、榊に話しかけられた際に、知ったかぶりをせず、素直に榊に質問することです。

そういえば、実際、筆者自身も、会社に入って、先輩から「あなたの資料は、『ガバチャ』が無いから読む気がしない」と言われたことを思い出し、今では常に『ガバチャ』を意識しています。

最後ではありますが、今回、弊社の選考プロセスにご応募いただいた皆様、改めまして、ありがとうございました。今後のプロセスで、皆さんの『ガバチャ』に触れる機会を楽しみにしています。

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